「子育てできる場所」が身近にあるシェアオフィスで働くということ
RYOZAN PARKオーナー・竹沢徳剛さんの目指す「ダイバーシティなコミュニティ」の一画を担う、このシェアオフィス。実際にRYOZAN PARKを利用している方にも、ぜひお話を聞いてみたい! ……ということで、入居者の1人である柳瀬正大さんを直撃しました。身近に子育てができるスペースとコミュニティがあることについて、男性はどんな視点を持っているのでしょうか。
▲柳瀬正大さん(アタラス株式会社)
7年間の旅行会社勤務を経て、2015年7月に独立したばかり。会社員時代、沖縄県に出向して海外の観光客誘致に取り組んでいた経験を生かし、現在も沖縄県の地域活性事業に携わっている。その他、海外に向けて日本文化を発信する動画サービスの開発などを準備中。RYOZAN PARK Otsuka:6F FOCUSの入居者。
――柳瀬さんは、なぜRYOZAN PARKに入居されたのですか?
独立をきっかけに都内のシェアオフィスに入ろうと思い、最初に何か所もリストアップして回ったんですよ。でもオーナー自らが案内してくれて、熱く想いを語ってくれたのはRYOZAN PARKだけだったんです。このオフィスの屋上でね(笑)
――なるほど……! はじめて訪れたとき、どんな印象を持ちましたか?
最初に来たとき、海外の方が何人かいるのが目にとまったんですよね。また「こそだてビレッジ」には子連れの女性が集まっていて。特定の業種の人だけではなく、本当にさまざまなライフステージ、事業フェーズの人がいる多様な感じに、とても好感を持ちました。
――入居されて間もないそうですが、他の入居者の方とつながりはできましたか?
はい。ここには本当にいろいろな人が集まっているので、「こんなことできる?」と、周りの人に声をかけて一緒に仕事をすることもあります。オーナーの竹沢さんが人脈をつないでくれることも多いですね。それぞれが個人で仕事しているけど、ここにいれば一人じゃない……そんな感覚です。
これからの「子育てと事業の両立」スタイル
「こそだてビレッジ」の内装やインテリアは、オーナーの竹沢さんいわく「僕がいても違和感がない」という基準――つまり男性でも抵抗なく使えるように配慮しているそうです。せっかくなので、昨年ご結婚されたばかりという柳瀬さんにも「子育てと仕事の両立」についてうかがってみました。
――私たち「ママプレナーズ」は子育てと事業を両立する女性のためのプロジェクトなのですが、柳瀬さんの周りにそういった女性はいらっしゃいますか?
僕の妻も姉も企業勤めをしているので、あまり身近にはいないですね。ただ彼女たちを見ていて思うのは、これからは組織の中にいてもアントレプレナーシップが必要なのではないかということです。
――そう思われるのはなぜですか?
これからの時代、子育てとの両立に限らず、自分で自立的に仕事をコントロールする、あるいは創り出すということが当たり前になっていくと思うんです。でも大企業に勤めていると、なかなかそういった視点が身につかないのが現状なのかなと。
だからこそ企業側も副業を認めたり、フレキシブルな勤務体系を導入したり、社員のアントレプレナーシップを支援していく必要があるのではないかと思うんですよね。
▲フリーアドレスになっている6Fのワークスペースは、広々とした空間。集中できそうです。
――実際RYOZAN PARK(「こそだてビレッジ」)の入居者のなかには、大手企業に勤める育児中の女性もいるとおうかがいしました。
そうですね。子どもを育てながら、これからもずっと働き続けるために何が必要なのかを考え、悩んだ挙げ句にRYOZAN PARKにたどり着く――というケースが増えているそうですよ。ここで起業のための準備をしたり、勉強したりする時間をつくっているようです。
――ちなみに柳瀬さんご自身が子育てをするという可能性については、現時点でどう考えていらっしゃいますか?
うちの場合は僕がある程度自由な働き方をしているので、僕の方がフレキシブルに動ければ問題ないかなと思っています。一人暮らしが長かったこともあり、家事も普通にしていますし。
何も女性だけが全てを背負い、わざわざ働き方を変えてムリにがんばる必要はないはずです。子育てをきっかけに、男性の方が働き方を見直したっていいと思うんですよね。
「シェア」によって生まれる大きな価値とは
「ダイバーシティなコミュニティを目指す」――さまざまなお話をおうかがいしているうちに、単に「子連れの女性が働ける場所」というだけではない、RYOZAN PARKの全体像が少しずつ見えてきました。
最後にもうひとつ。オーナー・竹沢さんのお話で印象的だった「シェア」に対する考え方を紹介したいと思います。
▲竹沢徳剛さん
「RYOZAN PARK」オーナー(株式会社TAKE-Z代表)。大学卒業後、ワシントンDCにあるアメリカン大学の大学院に留学。卒業後アメリカのローカル新聞社の記者として働いていたが、2011年の東日本大震災を機に帰国。ワーク&ライフが融合していたかつての大家族的なコミュニティを、新たに築くことを目指して活動をはじめる。2012年に、実家が巣鴨に所有していたオフィスビルを利用し、「RYOZAN PARK」をオープンした。
――竹沢さんが目指している大家族的なコミュニティというものは、日本では一度失われてしまったものでもありますよね。多様性のあるコミュニティの中で生活や仕事を「シェア」するということについて、改めてどう考えていらっしゃるのか教えていただけますか?
子育てもそうだけど、今の世の中、みんないろいろなことを個人や個々の家族の中で抱え込みすぎなんだよね。楽しいことも辛いこともそう。僕はまず、それをやめたほうがいいと思っているんです。
楽しいことを人とシェアすれば何倍にもなるし、辛いことは何十分の一にもなる。「シェア」によってもたらされる価値は、無限にどんどん広がっていきます。日本では、その価値を経験できていない人が未だに多いのかなと思っています。
――なるほど。確かにそうかもしれないですね。
「シェアオフィス」も「シェアハウス」も、社会的に見ると“サードプレイス”のひとつ。僕は地域の中にRYOZAN PARKのような“サードプレイス”的なコミュニティがいくつも生まれ、そこでたくさんの人がさまざまな「シェア」をすることによって、それらがゆるやかにつながる回路ができていけばいいと思っているんです。
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ビジネスだけではない。暮らしだけではない。私たちが日々頭を悩ませている「働き方」や「子育てと仕事の両立」などという問題は、RYOZAN PARKのようなコミュニティの中で、人と人、人と企業、企業やコミュニティ同士、そしてそれらと地域社会がつながっていくことではじめて解消されていくことなのでしょう。
今シェアオフィスなどへの入居を考えている方は、ただ「働く場所を借りる」というのではなく、「コミュニティに関わってみる」という意識を持ってみると、何かが変わるきっかけが生まれるかもしれないですね。
▲どの階も、とにかくセンスのよさが光るRYOZAN PARK。男女関係なく心地よく働けて、コミュニケーションが取りやすい環境が整えられていました。
[取材協力]RYOZAN PARK
Photo by Yuka Uesawa
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ワーク&ライフが交錯する、ダイバーシティなコミュニティ—RYOZAN PARK(東京都豊島区)【前編】