東京都豊島区の「RYOZAN PARK」オーナー・竹沢徳剛さんをたずねる
JR大塚駅を背に、都電荒川線の線路を越えて道なりに歩くこと3分。すぐに「RYOZAN PARK」という看板が掲げられたビルにたどり着きます。このビル内で2014年に新しくオープンしたのが「こそだてビレッジ」。子ども連れで仕事ができる場として、今注目を集めているシェアオフィスです。
▲「こそだてビレッジ」の内観。子どもたちが遊べるスペースが確保されています。
しかし! この「こそだてビレッジ」、実はRYOZAN PARKのごくごく一部にすぎないのです。
巣鴨のシェアハウスと、巣鴨・大塚のシェアオフィス2件。それらが相互にゆるやかにつながっているのが、RYOZAN PARKの全体像です。大塚のシェアオフィスは、5Fが法人向けのオフィス・スペース、6Fがフリーアドレスのワーキングスペースとなっており、「こそだてビレッジ」は同ビルの7Fにあります。
このシェアオフィスは一体、どんなカタチの「働く場所」を目指しているのか? それをうかがうために、RYOZAN PARKのオーナー・竹沢徳剛さんをたずねました。
▲竹沢徳剛さん
「RYOZAN PARK」オーナー(株式会社TAKE-Z代表)。大学卒業後、ワシントンDCにあるアメリカン大学の大学院に留学。卒業後アメリカのローカル新聞社の記者として働いていたが、2011年の東日本大震災を機に帰国。ワーク&ライフが融合していたかつての大家族的なコミュニティを、新たに築くことを目指して活動をはじめる。2012年に、実家が巣鴨に所有していたオフィスビルを利用し、「RYOZAN PARK」をオープンした。
[公式サイト]RYOZAN PARK
「ワーク」も「ライフ」も、すべてはつながっている
――竹沢さんは、「RYOZAN PARK」をどんな場所にしたいと思ってスタートされたのですか?
ひとことで言うと「ダイバーシティなコミュニティ」かな。それは国籍や性別もそうだし、ライフステージやビジネスステージもそう。日本ではどうしても、多様性が十分に受け入れられないことがまだまだ多いと思うんですよね。だからこの場所が、いろいろな世代、性別、そしてあらゆる国籍の人が混じり合う空間になっていけばいいな、と。
――その一歩として、まずはシェアハウス、暮らすための場所づくりからはじめられていますね。
そうです。はじめにつくったのは巣鴨のシェアハウス(2012年〜)です。まずはそこに入居してくれた人一人ひとりと、深く付き合っていくんだという想いがありました。
▲巣鴨にあるシェアハウスの内観。まるでラグジュアリーなホテルのよう。
――そこから近い場所に、シェアオフィスを2か所、作られたのはなぜですか?
「ワーク」と「ライフ」をなぜかわけて考える人が多いけれど、それは何か違うんじゃない? と思っていて。本来は、仕事も生活の一部じゃないですか。だから「生活する場所」としてのシェアハウスと、「働く場所」であるシェアオフィスがゆるやかにつながっている状態を作りたかったんですよね。毎日の暮らしとビジネス、両方が共存する場所としてね。
「ダイバーシティなコミュニティ」に、子連れOKのシェアスペースが生まれた理由
――2014年に「こそだてビレッジ」をオープンされていますが、シェアオフィスとして子連れで利用できるスペースを作ろうと思った理由を教えていただけますか?
この「こそだてビレッジ」はあくまでもRYOZAN PARKのひとつの側面であって、家族的なライフの延長線上にあるものです。 直接的なきっかけになったのは、実は巣鴨のシェアハウスの入居者のなかから、結婚するカップルが何組か出てきたことなんです。そこから「じゃあ子育てもみんなでシェアしようか」と、自然な流れで生まれた場所なんですよ。そしてこの場所には、僕の妻のとても強い想いも反映されているんです。
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竹沢さんの奥様であるレイチェル(Rachel Ferguson)さんは、スコットランド生まれ。おふたりにはまだ子どもがいませんが、彼女は日本の社会の中で子育てをするということに、大変大きな不安を抱いていたそうです。今回の取材時は残念ながら地元・スコットランドに滞在中だったため、公式サイトに掲載されているレイチェルさんのメッセージから一部をご紹介します。
“私は、やりがいのあるキャリアと母親になる喜びの両方を、同時に味わうことができると当然のように考えていました。でも20代の後半に突入してから、女性の友人たちや同僚を見て、考えは変わっていきました。彼女たちは仕事か家庭かを選ばなくてはならず、どうやらそれは、全く簡単なことではないようでした。日本では、多くの働く女性たちが「フルタイムで子供を預けるか」または「フルタイムで育児をするか」を選択するという事態に直面します。
でも、もしどちらかを選ばなくてもよかったら、どうでしょうか? もし子供をオフィスに連れて行くことができて、プロの保育士が見守る中、仕事をする自分の傍で子供が遊んでいたとしたら、どうでしょうか?もし自分のキャリアを追い求めながらも、子供の初めての言葉や初めて歩いた瞬間を見逃すことなく、締切に追われている最中も子供にお乳を与えることができる場所があったとしたら、どうでしょうか?それが、私たちRyozan Park Otsuka:Familyの提案する第三の選択肢です。”
(公式サイトより引用 http://ryozanpark.jp/village/)
▲RYOZAN PARKには、ご夫妻の強い想いが詰まっています。(写真提供:RYOZAN PARK)
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――現在はどんな方々が「RYOZAN PARK」、そして「こそだてビレッジ」を利用しているのですか?
起業準備中の人もいれば、ステップアップのための出会いを求めて来た人もいる。会社員の人が、第二のワークスペースとして使っているケースもあります。「こそだてビレッジ」には、育児と自分の事業を両立している女性(=ママプレナー®/編集部注)もいますし、企業に勤めている女性が、育児休暇中に利用しているケースもありますね。
人によって、ライフステージも、ビジネスステージも本当にさまざまです。男女比は3:1ほどで、海外の人も何人かいます。少しずつ入居者同士がつながりはじめ、共同のプロジェクトなども生まれているようです。
――「こそだてビレッジ」ができたことで、RYOZAN PARK全体に何か変化はありましたか。
子育て中の女性が増えて、さらに多様性の幅が広がりました。ただ「子連れで働く」という目的の女性たちだけではなく、未婚の人にも、男性にとっても、働いている場所にたまたまこういう場所があるというのが大事だと思うんですよね。いろいろな人生のレイヤーがあって、それらが一つの場所で複合的に絡み合っている状態。ですから今後は、5F・6Fのオフィスを利用している人も、男女関係なく気軽に7Fの「こそだてビレッジ」を訪れて、どんどん交流してほしいと思っています。
▲性別、国籍、年齢……実に多様なRYOZAN PARKの入居者のみなさん。
▼後編へ続く — 実際に入居されている方の声も交え、 オーナーである竹沢さんが目指すコミュニティのカタチについて、さらに詳しくお聞きしました。
Photo by Yuka Uesawa