内海 裕子2016/8/3

【パパ×ママ対談 vol.1 】新しい家族のカタチって?(前編)
「ママプレナーズ」が目指すのは、女性たちが多様な生き方やはたらき方を実現できる社会をつくること。そのためには、ママだけががんばるのではなく、パートナーや家族も一緒になって、協力し合うことが必要だと考えています。
そこで! 今のパパ・ママ世代が抱える問題や傾向、そしてそれを解決するためのヒントを探るため、「パパ×ママ対談」を行っていくことにしました。記念すべき第一弾に登場していただいたのは、NPO法人tadaima!代表の三木智有さん。三木さんが活動の中心に据えている「家事シェア」をメインテーマに、Mompreuners 代表の柳澤由香と対談していただきました。
Profile
■三木智有(みき・ともあり)さん
NPO法人tadaima!代表。インテリアコーディネーターの仕事を経て、2011年にNPO法人tadaima!を設立。
男性も家事に積極参加する「家事シェア」の普及を目指し、さまざまな活動を展開している。
半年前に女の子のパパになったばかりで、家庭でも家事・育児シェアを実践中。
◆公式サイト http://npotadaima.com/
■柳澤由香(やなぎさわ・ゆか)
Mompreuners Network Japan 代表。5歳になる双子のママとして、仕事と育児に奮闘している。
柳澤由香(以下、柳澤) パパ×ママ対談の第一弾ということで、本日はよろしくお願いします!
三木智有さん(以下、三木/敬称略) よろしくお願いします!
柳澤 三木さんはパパ目線から「家事シェア」普及に取り組まれていますよね。まずは、今のパパ・ママ世代の「家事・育児」に対する価値観が、どう変わってきているのか。そこからはじめてもいいでしょうか。
柳澤 そうですね。20〜30代の若い世代で、小さなお子さんを持つパパたちを見ていると、育児にもっと積極的に関わっていきたいという考えの人が増えていると感じます。家事のほうは、またちょっと違って難しいんですけど。
柳澤 ただ男性がそういう気持ちを持っていたとしても、いざ本格的に家事も育児もシェアしようとすると、お互いどうしていいかわからないというケースが多くないですか?
三木 ああ、それはよくあるパターンだと思いますよ。
柳澤 今の30代のパパ・ママたちって、基本的に親世代が築いた価値観や、家庭の在り方の中で育ってきているじゃないですか。だからどうしても、結局は女性側に負担がかかりがちになってしまうという……。
三木 そうなんですよね。家庭での自分の在り方を見直そうとする男性は増えているものの、関わり方がイマイチわからないし、そもそも男性が家事・育児に関わっていくことについて、その社会的な価値はまだまだ見出しづらい。そういう状況が、今も根強く残っているという現状はあると思います。
柳澤 だから「僕は育児やってます!」と胸を張っていう男性でも、よくよく話を聞いてみたら、休日にちょっと子どもと遊んでいただけだった、みたいな話もたまに聞きますし(笑) 家事・育児に対する認識が、男女間で大きくズレてしまっているんだなあ……と。
三木 そうかもしれないですね。ただその話をするうえでは、一つ無視できないこともあるんですよ。
柳澤 無視できないこと?
三木 それは、残業時間の問題です。世界的に見ても、日本人男性の労働時間は圧倒的に長いんですよね。それはもう歴然たる差で。だから当然、男性が1日のうち家事に携わる時間も短くなって、とある調査では平均がたった30分という結果が出ています。これは、先進諸国と比べてもかなり少ない。
柳澤 うーん……働くママがどんなに忙しくて、家事・育児をシェアしたいと思っても、パパたちもそれ以上に多忙な状況で働いているっていう。
三木 そうそう。それらと完全につながっている問題なので、単に夫婦が半分に家事を分担すれば解決するというわけではないんですよね。
柳澤 ちなみに三木さんは、家事も育児もご夫婦で協力し合ってやっていらっしゃるそうですが、ご結婚当初からそうだったのですか?(※対談当日も、とってもおいしそうなご自身手作りのお弁当を持参されていました)
三木 いや、実は全然なんです。妻と一緒に暮らし始める前は、家事や育児は妻がやってくれるものだと、僕も例外ではなくどこかで思い込んでいたんですよ。結婚したらそういうもんでしょ、みたいな。
柳澤 三木さんも最初はそうだったんですか……今の姿からは想像ができないですけど!
三木 さらには、そもそも周りの先輩たちに、なぜか離婚経験者が多かったんですよね。「結婚は地獄だ!」みたいな話をさんざん聞かされて、実は家事シェアどころか、結婚そのものに踏み切れなかった時期もありました。
柳澤 結婚は「人生の墓場」だと(苦笑)
三木 そうそう、「俺の自由がなくなる!」みたいなね(笑) でもその一方で、家事も育児も夫婦で当たり前のように分担してやっていて、そうしていない夫婦が不思議でしょうがない、みたいな人たちとも出会う機会があって。その方々が、みんなすごく幸せそうだったんですよ。
柳澤 うんうん。
三木 だから……というのが全てではないですけど、少しずつ「やっぱり男が家事するのも大事だな」と思うようになったんです。そうじゃないと、それこそ自分が定年を迎えるころに、家庭の中に「自分の居場所がない!」ってなりかねないなと。
柳澤 それってまさに、私たちの親世代が今直面している問題ですよね。
三木 そうそう。
柳澤 実際のところは、そういうことに危機感を感じて自分から行動を起こす三木さんのような方と、わかっているけどどうしていいかわからない方、仕方ないからやるという方、何言われてもやらないという方……にわかれる感じですね。
三木 どうしても、そうなりますよね。世間の風潮はかなり変わってきているものの、一度刷り込まれた価値観を変えるというのは至難の業ですから。
柳澤 価値観の刷り込み…というところでいくと、私は子どもを産んだタイミングで一度専業主婦になっていて、そのときに自然と、家事・育児は私の役割、というカタチが完全にできてしまったんです。そうなると、後からそれを崩していくのがもう本当に難しかったんですよね。
三木 なるほど。本当は結婚する前のタイミングで、そこを十分話し合っておくのが理想かもしれないですね。
柳澤 本当にそう思います。だから、これから結婚される方には声を大にして伝えたいんですよ。「最初が肝心!」って。
三木 そうですね。しかも夫婦や家族の関係性とか、お互いの状況ってどんどん変わっていくじゃないですか。だからその在り方に正解はないけれど、お互いのステージが変化するタイミングに備えて、とにかく日頃からコミュニケーションを取っておくことが何より大切なんですよね。
柳澤 その、お互いのコミュニケーション、という部分では、私自身も経験上反省しているところがあって。
三木 はい。
柳澤 もちろん本当は男性の方から主体的に気づいてほしいんですけど、そうじゃない場合は我慢しちゃって主張しない、自分ががんばればいいや、という女性も多いと思うんですよ。
三木 ああ、そうですね。
柳澤 そのウラにある感情って、嫌われたくないとか、できない女と思われたくないとかーー実際私もそうだったんですけど。
三木 うんうん。でもそれって、実は優しさだったりもしますよね。波風立てるくらいなら私がやればいいか、という小さな優しさが重なって、結果的に自分が追いつめられてしまうっていう。
柳澤 でも、それって自分自身ーー何も伝えようとしてこなかった女性側の責任でもあるなって思うんです。ちゃんと言葉で表さなきゃ、気持ちなんて伝わらないのに。
三木 そうかもしれないですね。
柳澤 勇気を出して、自分はこうしたい、だからこうしてほしい、とハッキリ相手に伝えること。そうやって一歩を踏み出すことが、コミュニケーションにつながっていくんですよね、本当は。
三木 おっしゃる通りだと思います……ふと、その話を聞いていて思い出したんですけど、僕、そういう意味では女性にとってすごく危険だなって思っていることがあるんです。
柳澤 危険なことですか?
三木 女性って、けっこうみんな「女子力」っていう言葉を使うでしょう?
柳澤 はい……ああっ!
三木 そう、あれってめちゃめちゃ危険なんですよ、実は。女性側からすれば、好きな人に対して女子力アピールしたいのかもしれないし、男性側からしても、されたらうれしいんですけど……。
柳澤 恋愛中は、まあそれでもいいんですよね。問題はそこから先。
三木 そうなんです! 女の子がかいがいしく料理してくれたり、家事してくれたりすることが、「結婚してもこうしてくれる」という男の勘違いを生んでしまうんですよ。
柳澤 しまったー!(笑)
三木 恋愛モードから結婚へ、女性はステージが切り変わるけれど、男はそのまんまだったりするわけですよ。女子力を信用して結婚したら、今度はいきなり「パパ力」とかを求められて、「なんじゃそりゃー!」みたいな(笑)
柳澤 ありがちですね……やっぱり、女性側も注意して変えていかなければいけないところがたくさんありそうです。
三木 そもそも、家庭とは夫婦2人で少しずつ築いていくもの、という根本的な認識から共有していくべきだと思うんですよね。家事と育児をどう分担するか、という事務的な話ではなくて。お互いどんなライフスタイルが心地いいのか、どんなペースならムリが出ないのかーーコミュニケーションを取ってそれを探りながら、それぞれのライフステージの変化とともに一緒に成長していくのが理想だと思っています。
▼後編につづく
夫婦で家事をシェアするための“プロジェクトリーダー制”とは?(後編)
Photo by Junko Sugai/Text by Yu Oshima
Writer
Mompreneurs 編集部
Mompreneurs 編集部です。
Coming soon.