若くして得た大きなチャンスを 逃さないために、独立の道へ
「下着メーカーで商品開発をしていたとき、周りの女性に話を聞くと『下着なんて、目に見えないところだから何でもいいじゃん』と言われることが多くて、それが悲しかったんですよね。そうじゃない。いちばん自分の近くにあるものだからこそ、きちんとこだわることで女性としてステキになれるのに」
現在「下着コンシェルジュ」として活躍している山田さんの原点は、“女性の美”にありました。女性が美しくなるのをサポートするために、最高の商品をつくりたい。でもそれを売っていくには、女性たちへの啓蒙活動も必要……。そこで山田さんは会社に勤める傍ら、個人でセミナーやブログをはじめ、コツコツと下着の基本知識を発信をしていたそうです。
あるときそのブログが女性誌編集者の目にとまり、当時はまだ数が少なかった「下着特集」の監修をすることに。ひとつの記事が出たことで、他の雑誌やTVなどからも、下着の専門家として次々と声がかかるようになりました。それをきっかけに、一気に道がひらけていったのです。
「最終的には、出版社から書籍出版のお話をいただいたんです。ただし私は会社員だったので、そこまで話が大きくなると勝手な行動ができなかったんですよね。でも私は、その本を絶対に出したくて。だから他のことは何も考えずに『辞めます』と……今思えば勢いですよね(笑)」
こうして山田さんは、26歳の若さで独立への道を歩むことになりました。
右も左もわからない商品開発の世界。 必死で走りながら模索を続ける
会社を辞めたものの、何をやるかは全く決めていなかったという山田さん。ちょうど同時期に退職した大学時代の同級生であり、現在も共同経営者として活動を共にしている上田美央さんと、「女性向けの商品を作りたいね!」と夢を語り合っていたそうです。
しかしその後、すぐに運命の出会いが訪れます。本当に偶然、ふたりが全く同じマッサージソルトに惚れ込み、とにもかくにもその開発元の企業に「こんな商品が作りたい」と突撃で電話したといいます。
「私たちは化粧品開発の知識も何もないただの素人でしたが、たまたまその企業が、マッサージソルトを東京で広めてくれる人を探していて。ぜひ何か一緒にやりましょうといってくださったんです。たださすがに個人との取引はできないということで、自然な流れで法人化することになりました」
こうして2006年に、株式会社シルキースタイルが誕生。……しかし大変だったのはそこからでした。商品を販売するにもツテも何もなかったため、直接販売店に突撃で営業し、自分たちの足で全国の店舗を回って商品を販売する日々が続いたのです。
「結局あまりにも過酷すぎて、手伝ってくれた別の友人含め、全員が体を壊してしまいました。こうして自分たちの時間を切り売りしていたら、いつになっても事業が大きくならないことを身にしみて実感しましたね」
一度広げた事業を縮小し、次のビジネスモデルを模索していた山田さん。そのタイミングで、再び運命的に出会ったのが「TVショッピング」の世界でした。
世の中にまだ知られていない商品に 光を当てて、大勢の人に届けたい
全国を回って商品を販売するのは難しくても、TVを通して商品の持つストーリーを魅力的に伝えることならできる――TVショッピングという新たな舞台を得て、シルキースタイルのコンセプトが少しずつ固まっていったそうです。それは苦難の日々を経て、ようやくたどりついたひとすじの光でした。
「世の中には、全然日の目を浴びていなくてもすばらしい商品がたくさんあるんですよね。もしくは『こんな商品が欲しい』というアイディアがあっても、どうしたらいいか分からない人も多いはずです。私たちはそこにスポットを当てて、商品を形にし、それをひとりでも多くの方に届けていきたいと思ったんです」
自分たちが手がけたものからヒット商品が生まれはじめ、一気に売上が拡大しはじめたのは、起業から3年が過ぎた頃のこと。そこで山田さんはようやく、「次のステージに上がれた」と実感できたそうです。
「TVショッピングは結果がすべてリアルタイムでわかる分、落ち込むときは落ち込みます。でもだからこそ、自分たちの商品がすべて完売した瞬間は本当にうれしいんです。もう、スタジオにいるチーム全員で大泣きするくらい(笑) 商品開発は大変なことも多いですし時間もかかりますが、自分たちが納得できる“いい商品”を、これからもみなさんに届けていきたいですね」
子どもたちのおかげで、 新しい世界を知ることができる
「正直、会社に余裕が生まれるまで出産できないと思っていた」という山田さんが、実際に第一子を妊娠・出産されたのは34歳のとき。会社が軌道に乗っていた時期だったそうです。会社を経営する女性が悩むことの多い出産のタイミングを、山田さんはどのようにして迎えたのでしょうか?
「妊娠して真っ先に思ったのが『稼がなきゃ!』ということだったんですよね。 出産前後にどのくらいブランクができるかわかりませんから、それまでに私がいなくてもちゃんと会社が回るような体制を作って、社員のお給料を払える分だけ稼いでおこうと思いました」
ちなみに山田さんが旦那様と出会い、結婚したのは起業して間もない頃。そのため仕事に対する理解は結婚当初から得ていたそうです。
「結婚前に、『私は一生働くから、家事はできないしやらないよ!』と宣言しておきました(笑) 夫の方が楽しそうに働く私に触発されたのか、勝手にサラリーマンを辞めていつの間にか独立していたくらいです」
多忙な日々を送るなか、家族やベビーシッターサービスなどを上手に使い、お子さんとの時間も大切にされているそうです。
「単純に子どもは可愛いですよね。自分自身が新しいことを経験するのが好きなので、子どもたちが私に新しい世界を見せてくれているような気がします」