フリーランスになると同時に、 妊娠・出産というライフイベントを迎える
「学生の頃から、結婚しても、子どもを産んでも、ずっと働いていたいと思っていました。でも、私の周りには結婚を機に、仕事を辞めて専業主婦になる女性が多かったんです。それも価値観のひとつではあるけれど、なんだかとてももったいないなと思って。バリバリ働けないなら、仕事を辞めるしかない。女性たちがどちらかを選ばざるを得ない状況に、疑問を感じていました」
そう話してくれた小野さんは、3人のお子さんを育てながら、フリーランスのウェブプロデューサーとして長年仕事を続けていらっしゃったママプレナー®(※2014年に法人化)。ただ「働き続けたい」という意思はもともと強かったものの、独立のきっかけは小さな偶然からだったのだそうです。
「独立前は、憧れていたウェブメディアの運営会社で働いていたのですが、時間がたつとともに『自分はこのままでいいのか?』などと、いろいろな葛藤が生まれてしまって。それであるとき一度リセットしようと、先のことを何も決めずにとにかく退職することにしました。すると先輩たちが『ヒマならうちの仕事やらない?』と声をかけてくれたんです」
そのときは「フリーでも何とかなるよ」という、先輩の言葉を真に受けてしまってーーと笑う小野さん。しかし、当面はフリーランスでやっていこうと決めた矢先に、もう一つの“転機”が訪れることになります。1人目のお子さんの、妊娠が発覚。それはなんと、退職を決めて有給休暇の消化に入った、正にそのタイミングだったそうです。
とにかく情報がない! 自身の経験が、新たなサービスの構想に
「フリーランスになった途端に、産休も育休もないのにどうすればいいんだろう? という事態に直面してしまいました。さらにそれ以前の問題として、請求書の書き方、報酬の支払い周期……はじめてのことだらけで、本当に右も左もわからない状態。フリーの働き方、先輩方のノウハウを知りたいと思っていましたが、当時はそういった情報が集まっている場がなかったんですよね」
出産後、8か月でお子さんを保育園に預けることができたのを機に、働き方について改めて見つめ直したという小野さん。「自分が本当にやりたいことは何だろう」――そのときに頭に浮かんだのが、フリーランスの女性に向けた情報サイト「Rhythmoon(リズムーン)」の構想だったそうです。
「子どもを預けて働くからには、自分が心から情熱を注げることをやりたい。それなら、自分でウェブメディアをやってみよう、と。私はもともと、子育てしながら女性が働くことが特別なことでない、ごく普通の世の中になるべきだと思っていました。それを実現する選択肢のひとつとして、ライフステージに合わせて自分で内容やボリュームなどを選べる、フリーランスという働き方を紹介したいと考えたんです。いい面も、大変な面も、両方ですね」
小野さんは2011年に第2子、2013年には第3子を出産。その都度、働き方のペースを調整しながら、ウェブの仕事と「Rhythmoon」の運営を続けてきたのだとか。
「大変な部分も大きかったですが、私は好きな仕事をすることも、子育てを楽しむことも、我慢したくなかったんです。どちらも諦めないですむ選択ーーそれが、フリーランスという働き方の魅力。母親になって、より一層そう感じるようになりました。」
第3子の誕生を機に、法人化。 フリーで働く女性をサポートしていきたい
フリーランスとして働きはじめて8年目となる2014年、小野さんは「Rhythmoon」をはじめとする事業を法人化し、合同会社カレイドスタイルを設立されました。今、このタイミングで法人化に踏み切った理由とはーー?
「『Rhythmoon』は私の個人的な想いからはじまったので、どうしても収益化を後回しにしていた部分がありました。でも、価値あるものとして続け、残していくためにきちんと事業化していこうという気持ちが出てきたんですよね。3人目の子どもが2013年に生まれたのも、実は大きかったです。今後のためにも、がんばって稼がなければ!と(笑) もしかしたらこの子は、私にそれを決意させるために生まれてきたんじゃないかと思ったくらいです」
これまでは情報発信やイベントを中心に展開してきた「Rhythmoon」。法人化を機に、今後は実際の仕事を創り出してシェアすることや、スキルアップを目指すフリーランスのサポートなど、さらに事業内容を充実させていきたいそうです。
「子育てをする女性が、働き続けながら目標や夢を叶えていける。しなやかに、自分らしく生きるためのサポートをしていきたいですね。私自身もひとりの女性として、母親として、全力でやりたいことに取り組んでいきたいですし、子どもたちには、私が楽しく働いている姿を見て育ってほしいなと思っています」
「どうしてほしいか」を明確に伝え、 夫婦が“チーム”のような関係に
3人の子育てをしながら、自分の事業を両立させるのは、どうしても至難の業に思えてしまいます。小野さんはどのように仕事と家庭の両立をされてきたのでしょうか。
「うちの場合、どちらの祖父母も遠方にいて頼れませんでした。だから夫婦でなんとか乗り切るしかなかったんですよね」と、小野さん。実は旦那様も経営者で、現在は夫婦2人、ご自宅を拠点にお仕事をされているのだそうです。
「自宅で夫が仕事をするようになったのは、すごく助かりましたね。バタバタする時間帯に大人の手が2人分あるので、なんとか分担してやりくりしています。でも、最初の頃はすごくケンカもしましたよ。家事・育児はこんなにやることがあるんだ!というのをわかってもらうために、やることを全部書き出して分担表を作ったこともありました(笑)」
男性は「察する」のが苦手だとよくいわれますが、やはりそうなのでしょうか……?
「女性ってつい“気づけよオーラ”を出してしまいがちですが、結局、はっきり言わないと何も伝わらないんですよね。うちの夫も『わからないから、言ってくれたらやるよ』というスタンスでした。とにかく、それを日々繰り返すことだと思います。そうしているうちに、夫との間に “チーム”のような関係ができた気がしますね」