どうやってマネジメントしている? 在宅社員の仕事スタイル
同社の1日は、朝9:00の定例ミーティングからはじまるそうです。……といっても、もちろん全員がそれぞれの自宅にいるわけですから、使用するのはSkype(スカイプ)。ここで業務のすり合わせを行った後、各々が自分の仕事をスタートしていきます。
「いるところはバラバラですが、全員で1つのプロジェクトに取り組んでいます。聞きたいことがあるときは、Skypeのチャットを使うことが多いですね。必要があれば、もちろん電話でも話します」(社員Dさん・女性/福島県在住)
離れていて、不便に感じることはあるのでしょうか。
「正直、他の人の様子がわからないので、どうしてもマイペースになりがちではありますね。誰がどう忙しいのか、状況が見えにくい。だから電話をかけたりするのも、自分の都合になってしまうというか」(社員Eさん・女性/東京都在住)
在宅勤務だと、働くペースを自分で管理しなければならないというハードルもありそうですが……?
「オフからオンの切り替えというよりも、私の場合はオンからオフにならない方ですね(笑)極端な話、24時間いつでも仕事ができてしまう環境なので、ついつい……」(社員Bさん・女性/長野県在住)
「みなさん能力が高く、責任感も強い方が多いので、どちらかというと、管理側が止めないと必要以上にがんばってしまうんですよ。それもメンバーに恵まれているからこそでしょうね」(管理職Cさん・男性/埼玉県在住)
在宅勤務を「経営スタイル」として公言することの意味
いろいろとお話をうかがってみると、社員のみなさん同士はもちろんのこと、代表である登坂さんとの間にも、とても強い信頼関係があることが伝わってきます。
「とにかく登坂さんは『管理しない』人。そもそも任せてもらえるような人が集まっているのか、『管理しない』といわれるから自分たちで自律できるようになるのか……どちらかはわかりませんが、全員それができなければ、在宅勤務という今の働き方は成り立ちませんよね」(社員Bさん)
おそらく、社員の在宅勤務を認めることに抵抗がある経営者の方にとって、一番の懸念点もそこにあるのでしょう。在宅勤務している社員が、きちんと自律的に働いてくれるのか。本当に生産性が上がるのか。そうしたリスクについて、登坂さんはどうお考えだったのでしょうか。
「在宅勤務を当社の経営スタイルとして明言していることで、優秀なのに事情があってフルタイムでは働けない……という方を、紹介していただける機会が増えたんですよね。信頼できる人を介した紹介であれば、そもそも人柄がしっかりしている方が集まりやすい。ですから、在宅勤務をどう扱うかは、経営者次第だと思いますよ。
一度優秀な人が入社してくれれば、あとはこの人たちが辞めないためにはどんな仕組みがあったらいいのか、考えるだけでいい。在宅勤務は、その一つの手段にすぎません。いずれにせよ、それは『働かない社員をどうマネジメントするか(あるいはどう辞めさせるか)』を考えるより、よほど楽なはずです」
事情があっても、働き続けられる環境がもたらすものとは
さて、楽しくいろいろなお話をうかがってきた会食の時間も、そろそろ終わりのときが近づいてきました。せっかくなので最後に、みなさんに「ファイブテクノロジーに入ってよかったと思うこと」をうかがってみることにしました。
2人目のお子さんがハンディキャップを持っているということがわかったとき、仕事を辞めるつもりで登坂さんのところへ行ったとEさん(女性/東京都在住)はいいます。
「みんなと同じようにはきっと働けない。もうあきらめるしかないと思っていました。ですが、このことを報告した私に、登坂さんは迷わず『じゃあどうしたらいいかなあ?』と、私が働き続けるために必要なことを真剣に考えてくださいました。フレキシブルな勤務形態を認めていただいたおかげで、仕事の時間が、今では“自分自身を取り戻せる大切な時間”に変わったんです」
さらに、社員のみなさんが口をそろえておっしゃっていたのは「家族の事情がオープンにでき、しかもみんなに受け入れてもらえる」こと、そして「ずっと働いていてほしいと言ってもらえる」ということへの安心感と、感謝でした。
「普通の会社では、子育てや介護などの事情を抱えていると『これを会社に言ったら辞めなければいけないかもしれない』という不安がつきまといますよね。でもファイブテクノロジーは、全員にそれぞれの事情があるから気兼ねなく相談もできるし、仕事もムリなく続けられる安心感があります。だから気持ちは2倍、楽なんですよ」(社員Bさん・女性/長野県在住)
これから先、子育てに介護などが加わることで、働き盛りの世代でも、こうした事情を抱える人が増えていくでしょう。そうした時代のなかで、どうすれば優秀な人を集め、組織として強固な信頼関係を築いていくことができるのか。ファイブテクノロジーの経営スタイルには、そのための一つのヒントが詰まっているように思いました。
最後に、大変印象的だったBさんの言葉で、この記事を締めくくりたいと思います。こうした意識を持った方が、どんな事情があっても働き続けられる経営スタイルこそ、今の社会に必要なものなのではないでしょうか。
「『辞めないでほしい』といわれることは、社員にとってはプレッシャーでもあるんです。自分が今のままのレベルにずっととどまっていたら、だんだん会社に申し訳なくなってくるはずですから。
在宅勤務であっても、社員全員が仕事をきっちりこなして、それぞれの人生も充実させることができて、そこではじめて私たちは胸を張っていられるんです。『私たちの姿を見てください』と、登坂さんの後ろにずらっと並んで輝いていられるように。それができてはじめて、登坂さんと会社に少しの恩返しができるのだと思っています」
◆ファイブテクノロジーのみなさん、ご協力ありがとうございました!
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男性も女性も、家族の事情に合わせて仕事をデザインしていく—全員が在宅勤務の会社【前編】