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ココロの声を、聞いていますか?[連載第5回]

【後編】あなたはパートナーにどんな役割を期待していますか | ココロの声を、聞いていますか?[第5回]

【後編】あなたはパートナーにどんな役割を期待していますか | ココロの声を、聞いていますか?[第5回]

 

みなさまこんにちは! 臨床心理士の北嶋尚子と申します。

臨床心理士の資格を取得して、早10数年がたちました。一児の母になった今も、カウンセラーとして仕事を続けています。母として、妻として、職業人として……自分自身の経験を通して知った、さまざまな心理学の知識やストレスへの対処法、コミュニケーションのコツなど――日常のふとしたシーンで役立てるヒントを、身近なエピソードをまじえながらご紹介していきたいと思います。ママプレナー®としてがんばっている方をはじめ、みなさまの毎日をよりいきいきと、充実したものにするための一助になれば幸いです。

 

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まずは、相手への期待を整理してみましょう

前回は夫婦間で役割期待のズレがあると不満が生じるということについてお話しました。

[関連記事]あなたはパートナーにどんな役割を期待していますか【前編】

些細なズレはどちらかが我慢したり気にしないようにしたりすることでやり過ごすこともできます。しかし些細なことだからこそ、ズレを修正することが可能な場合があります。お互いにわかりやすいコミュニケーションを心がけて、不満を減らしてみませんか?

 


 

まずは、相手への期待を整理してみましょう。次の3つの視点から考えていきます。

(1)具体的にどんなことをしてもらいたいのかを考えてみる

普段、「本当はこうしてほしいのになあ」「もうちょっとこうしてくれたら良いのになあ」と感じているけれど、「どうせ言ってもやってくれないだろう」「自分がやればいいや」と飲み込んでいることはありませんか?

→ なるべく相手が「できる」「できない」で答えられるような具体的な行動を挙げてみましょう。

 

(2)相手にとって現実的な期待かどうかを考える

そもそも、どうがんばってみても相手が実現できないような内容であれば、あなたが望んでも、期待にこたえてもらうことはできません。

→次のことを考えてみてください。

「自分の期待していることは、実際に相手が実現できそうなことか?」「これまで相手が実際にやっているのを見た事があるか?」

 

(3)自分の期待が相手に伝わっているかを考える

「これくらいは言わないでもわかるでしょ」と思ってあえて説明しないこと、「○○さんの旦那さんはこんなことしてくれるんだって」とだけ言ってお願いしたつもりになっていること……とくに男女間ではよくあることです。自分では伝えたつもりでも、相手には全く伝わっていない。そんなケースは案外多いものです。

→ あなたはこれまで、相手に期待していることを明確に言葉にして伝えたことがあるかどうか、過去の会話を振り返ってみましょう。

 


 

相手に伝えてみましょう

期待が整理できたら、今度は実際に相手に伝えてみましょう! 伝えるときに、気をつけたいポイントをお伝えします。

(1)攻撃しない

私たちは強く主張すれば、相手が言うことを聞くと思ってしまっているところがあります。しかし実際はどうでしょうか。攻撃されると、相手は自己防衛のために反撃したり、意固地になったり、無視しようとしたりします。

→ 攻撃すると話し合いにならないので、相手に期待を伝えるには、自分の心が穏やかなときを選びましょう。

 

(2)伝えるタイミングを考える

ちゃんと伝えたつもりなのに、「そんな話は聞いていない! 初耳だ!」と言われたことはありませんか? 相手がテレビや新聞を見ている時など、何かをしている最中に離れたところから「〜しておいてね」と伝えても大抵の場合、相手はちゃんと聞いていません。

→ まずは、相手が「聞く体勢になる」状況を作り出しましょう。例えば、「ちょっと話があるんだけど、今いいかな?」「大事な話があるんだけど、今いい?」「いつなら話ができそう?」と尋ね、相手に聞く態度を準備してもらってから伝えましょう。

 

(3)なるべく結果・効果と結びつけて伝える

あれこれいくつも期待されたり、依頼されたりするばかりでは、誰でもいい気がしませんよね。

→「あなたがこれをしてくれると、こんな良い効果があるのだ」「こんなふうに役立つのだ」という伝え方をしてみましょう。相手にとってもメリットがあり、「なるほど」と納得してもらえる内容なら、了承してもらえる可能性が高まります。

 

(4)相手からの返事をもらう

言いっぱなしにするのではなく、相手のからの返事をもらいましょう。

→ 「〜してよね」と伝えるのではなく、「〜してもらいたいんだけど、どうかな?」と依頼をしてから返事をもらうのが良いでしょう。

 

(5)実行してくれたらほめる、「ありがとう」を伝える

相手のした行動が「本当はもっとこうしてほしいのになあ、足りないなあ」と感じたとしても、まずは「相手が行動しようとしてくれたこと」自体に感謝の気持ちを伝えましょう。

→ 「ありがとう!」「助かるわ」「上手だね」などと伝えましょう。何度かやってもらうことで相手もコツをつかんだり、上手にできるようになったりするので、待つことも大事です。

 

(6)粘り強く伝えていく

伝え方を工夫したからといって、必ずしも相手が全てを受け入れてくれるわけではありません。

→ ノーと言われた時には、「どのあたりが無理そう?」「他に良いアイデアあるかな?」と相手に聞いてみたり、伝え方を変えたりしてみてください。

また、一度で伝わらなくても、別の機会に伝えてみても良いでしょう。始めからうまくいかなくても、あきらめずに粘り強く伝えていきましょう!

 


 

相談者:Cさんの場合

Cさんは自分の期待を整理して、夫とのコミュニケーションを見直していくことになりました。(1)〜(6)の手順で実際の伝え方を考えるところまでを下の表に示します。

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Cさんはカウンセリングで自分の期待を整理し、コミュニケーションを振り返る作業を続けたところ、少しずつ旦那さんの行動に変化が出てきました。それにより、Cさんも自然と「ありがとう」と伝える機会が増えて、夫婦のやりとりがスムーズになったそうです。

私たちは相手の行動を見て、その人の思いや考えを読み取ろうとするところがあります。期待どおりの行動が増えると、相手への信頼感や安心感が高まります。

Cさんも、育児も家事も以前に比べて、「二人で一緒にやっている」という感覚が持てるようになったそうです。それにともないイライラすることも減って、仕事にも以前のように集中して取り組めるようになりました。

以上、期待の修正と伝え方の工夫を説明しましたが、普段のやりとりのすべてを変える必要はありません。自分のこれまでのコミュニケーションを振り返って、ここはちょっと変えてみても良いかなと思えるところがあれば、少しずつ、一歩ずつ試してみてくださいね。

 

北嶋尚子(きたじま・なおこ) 臨床心理士

Writer

北嶋尚子(きたじま・なおこ) 臨床心理士

2004年、臨床心理士の資格を取得。以来、精神科クリニックや大学、企業など、さまざまな現場でカウンセラーとしての仕事に従事。日々がんばっている人が、よりいきいきと、より健やかに毎日を過ごしていくためのサポートに取り組んでいる。

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