「100万回生きたねこ」でおなじみ、佐野洋子さんの日々
佐野洋子さんといえば、大ベストセラーの絵本『100万回生きたねこ』の作者として知られていますよね。
絵本のほかにも童話などを多数執筆されている佐野さんですが、私のイチオシはなんといってもエッセイです。特にオススメなのが、こちらの『ふつうがえらい』というエッセイ集。
佐野さんの手にかかると、なんてことのない日常がこんなにもイキイキと輝くものかと驚かされるのです。
「人生は長い。長いが短い。」
痛快な文章で描かれるのは、ときには1人の女性として、ときには息子を持つ母として、そして作家として……さまざまな視点から切り取られた佐野さんの過去の記憶や日常など。なんてことのない日々、ちょっとしたできごと。それなのに、エッセイの冒頭だけで一気に引き込まれてしまいます。
「私、わかりません。わかりませんけど、私「正義」というものが大嫌いです。」(p169/「ハハハ、勝手じゃん」)
「私は子供を持ちたくなかった。子供を持てば親にならなくてはならない。」(p210/「この子買います」)
何のことについて書かれたものなのか、気になる方はぜひ手に取ってみてください。読んでいるうちに、なんだかどこかから元気が湧いて出てくるから不思議。そう、きっと何よりも「ふつうがえらい」のかもしれない。
佐野洋子・著/1995,新潮社