ひとりの女性がかさねた「時間」の重みをじっくりと感じる本
「この先、自分はどうなるんだろう」――ふと、そう考えることはありませんか? 結婚してパートナーを得て、自分の事業を展開し、子どもを生み育てていく。慌ただしく過ぎる時間のなか、30、40代にさしかかると、数十年後の自分自身の人生に、想いを馳せることも多くなるのではないでしょうか。
篠田桃紅さんは、御年103歳になる美術家。墨を用いた抽象表現の作品で、世界的に知られています。この本は、桃紅さんがご自分の長い人生を振り返り、今、感じることを淡々とつづったエッセイ集です。
そこには、長い時間を積み重ねてきた女性ならではの、静かな人生訓がならんでいます。
「自分の心が一番尊い、と信じて、自分一人の生き方をする。」
桃紅さんご自身は独身で、家族をもつことはなかったそうです。しかしこの本を読んでいると、どんなに大勢の家族がいても、たくさんの友人に囲まれていても、根っこにあるのは「自分ひとりの人生」なのだということに気づかされます。自分の人生を、いかに考えていくか。それはパートナーがいようと、子どもがいようと、大切なことなのかもしれません。
“人生は、なにが一番ほんとうにいい生き方なのか、はっきり言える人はいないと思います。でも最後に、いろいろあったけれども、やっぱり私はこうでよかったと、自分自身が思える人生が一番いいだろうと思います。”(本書より)
篠田 桃紅 :著/幻冬舎,2015